豪快な一打、静かな涙、そして…
試合の勝敗を超えた、もうひとつの“物語”が始まっていた。
ベッツとフリーマンの快打が、試合の流れを変えたその日。
再起不能とまで言われた男・ダスティン・メイは、
ある“約束”を胸にマウンドへ向かっていた。
その前日、たった3人だけが招かれた、翔平の新居。
そこに広がっていたのは、ロサンゼルスとは思えぬ“和”の空間。
畳敷きの道場、掛け軸、そして静寂の中で行われる「間」の呼吸トレーニング。
誰もが言葉を失うその空間で、彼らは何を見て、何を誓ったのか――。
試合当日、感情を抑えきれずグラブを叩きつけたメイ。
だが、その背中にそっと手を添えたのは、翔平だった。
「君があのマウンドに立った。それだけで十分だ」
そして、和室のふすまが開き、ひとりの赤ん坊が現れた時、
全ての緊張がふっと溶けていった。
その小さな笑顔が、大人たちの心をほどいた。
この夜、勝利したのはドジャースだけではなかった。
人としての強さと優しさが、静かにベンチを包んでいた。